Bang & Olufsen カートは空です : Cart is empty

WOO KUKWON INTERVIEW

無垢への憧れ、年齢を重ねるとともに見失った価値に目を向けたい

Bang & Olufsenのために生まれた新作《Nirvana》(2026年)。その発表を記念して、韓国現代アートシーンで独自の存在感を放つアーティスト、ウ・クグウォンにインタビューしました。

 Wookukwon - Your Mind is Nirvana

娘の誕生が、私の意識を大きく変えた

世界各地のアーティストやクリエイターが「Beosound A9」をキャンバスに見立て、オリジナルカバーを描く「Art of the A9」シリーズ。その最新作がフォーカスするのは韓国のアーティスト、ウ・グクウォンだ。

さまざまな手法で幻想的な世界を色鮮やかに描いてきたグクウォン。今回は自身の作品でも特に人気の高いシリーズをもとに、描き下ろしを加えた作品を提供した。厚塗りの絵の具で立体的に表現された満開の桜の下に動物とともに描かれた少女は、自身の娘をモデルにしたものだ。その作品は見る者を心の旅に誘う。「これまでキャンバスに制作してきた作品が新たな媒体と出会うことでどのように異なる解釈や体験をもたらすのかを見るのはとても興味深いこと」と語る。

「私の作品の基盤にあるのは個人的な体験や記憶です。なかでも根源的な人間の感情、無垢への憧れ、普遍的でありながら定義し難い感情、私たちが人生を歩むなかで次第に見失い忘れてしまう価値観を繰り返し扱っています。なにより娘の誕生が、私の意識を大きく変えました。それまでも制作を通じ、私自身の内なる問いと向き合っていました。けれど娘の誕生で人生の目的が一変しました。これまでに経験したことのない圧倒的な愛が芽生え、同時に本能的な恐怖や畏敬の念も感じたのです。そして彼女が世界を見つめる姿、無邪気な好奇心を目の当たりにするうち、私自身が慣れ親しんで疑問を抱かなくなったことや単に忘れていたことを再考するようになりました」

Interview with Woo Kukwon

かつて出会った芸術がふいに思い浮かび、現在の自分と結びつく

現在、制作を進めるシリーズではプリンセスを扱っている。これは世界中の少女の多くがプリンセスに憧れる時期を迎えることに起因するという。まさにいま娘がその渦中にあるとグクウォンは苦笑する。「娘と一緒に絵を描いています。私は娘の絵を模しながら、同じ絵なのに二人の視点がどう違うのか、自分の目にはどう映るのかを考察しつつ、いずれ二人の絵を一緒に組み合わせるつもりです」。これはユニークな試みだが、他の作品で描いてきた物語はどのように生まれたのだろう。

「意図的に新しい題材を探し求めるよりも、長く心に残っている出来事から着想を得ることがほとんど。文学、宗教、哲学、音楽、映画、美術作品などが記憶に残り、ふいにそれらが思い浮かび、現在の自分の経験や感情と結びつきます。かつて見過ごしたものが数年後にまったく異なる意味や重みを持って戻ってくることも。そんな時にこそ、より深く見つめ直します」

グクウォンは大学で神学を学び、そこから哲学やさまざまな文化への興味が広がったと振り返る。韓国やヨーロッパの古い物語に由来するモチーフを織り込んだ作品も多い。

Woo Kukwonのアトリエ

馴染みあるモチーフから、いまの自分とつながる思考や感情を見つける

「ただ、もとのイメージや物語をそのまま再現することはありません。多くの人にとってすでに馴染みのあるモチーフから、いまの自分とつながる思考や感情を見つけ、現在の視点からそれらを再考するのです。たとえば親になったいま、愛と犠牲を描く古典文学をふたたび読み解くと以前とはまったく異なる意味が見出せる。作品では時にまったく異なる出自を持つモチーフを共存させることもあります。

異なる時代や文化が出会うこともあれば、馴染みあるイメージに、あえてそのイメージと結びつかないような行動をとる登場人物、異なる出来事、主題、あるいは私自身の経験を加えることもあります。すると私たちが馴染みあるものに結びつけていた意味は変化し、新たな関係性が生まれます。私は、そうした関係性から生まれる皮肉や物語に興味があるのです。だから娘との経験が作品に大きな影響を与えるのです。

身近な物事に対する彼女の異なる視点に寄り添い、彼女が先入観なしに物事を受け入れる様子を見ることで、私が当たり前だと思っていた物語やイメージも新鮮に感じられるようになりました。私の作品は長い時間をかけて蓄積された記憶、イメージ、印象が、現在の体験と出会い、今の私を形作る感情と絡み合い、互いに結びつき始めるというプロセスから生まれるのです」

Interview with Woo Kukwon atelier paint Image

異なる文化の組み合わせで生まれるものに目を向けた

グクウォンは葛飾北斎を引用するシリーズにも取り組む。今回のコラボレーションモデルでも日本で展示があると聞き、作中にいくつか日本的なモチーフを取り込んだ。

「(兵役義務を経て)軍隊を退役した翌日、私はヨーロッパへ旅立ちました。そこから帰国すると、今度はそのまま日本へ旅立ちました。大きな目的はなく、ここから逃れたいという気持ちが強かったのです。私はクリスチャンの家庭に生まれ、クリスチャンとして教育を受けて育ちました。つまり西洋文化の影響を強く受け、二十代の頃には神学を学んでいます。日本は人口も経済規模も非常に大きな国ですが、大国には珍しくキリスト教徒の人口が非常に少ない。それを不思議に思い、日本の宗教観についても勉強をするなかで自然崇拝を背景とする豊かな文化をもつことが理解できました。葛飾北斎の作品をオマージュしながら宗教的な要素を盛り込み、異なる文化の組み合わせで生まれるものに目を向けたのです」

安らぎと自由を感じたあの時を思い出してほしい

一方で、桜のような普遍的な題材も扱う。

「私は桜の名所として知られる汝矣島に長く住んでおり、住まいのすぐ横には桜並木があります。ですから桜を描くことはごく自然なことでした。もちろん桜のほかにもさまざまな花をモチーフにした作品を手がけています。作品には馴染みあるモチーフがよく登場しますが、それらは単一で固定された意味を伝えるものではない。私たちは物事をありのままではなく、時間をかけて蓄積した経験、記憶、知識を通して触れることになります。ですから同じものでも、それぞれの背景によって異なる解釈や感情が生まれます。私たちが同じイメージからそれぞれに異なる発見をすることができるのはとても興味深いこと。私もまた、固定された解釈を提示するよりも解釈の余地を残しておきたいのです」

今回の「Art of the A9」では「ニルヴァーナ」を描いたという。それは、心の動揺や執着から解放された完全な内なる平安の状態を意味するものだ。

「誰もが現実の重荷からしばらく距離を置き、すべてを忘れたいと思う瞬間があるのではないでしょうか。満開の桜の木陰でくつろぐことは、崇高な体験とは程遠い、ごくありふれた安らぎに過ぎないかもしれません。しかし、だからこそその瞬間が『これで十分』と感じられるのかもしれません。私が思い描く『ニルヴァーナ』も遠い理想の状態というよりは、日常生活の中で時折経験する安らぎや自由の感覚――特別な目的を持たずにただその瞬間に完全に身を委ねている状態――に近いものです。この作品に出会った方がしばらくの間他の考えを脇に置き、心から安らぎと自由を感じたあの時のことを思い出していただければと願っています」

Beosound A9 Art of A9 Wookukwon edition

Beosound A9 Wookukwon Edition

Your Mind is Nirvana

韓国現代アートシーンで独自の存在感を放つアーティスト、ウ・グクウォン。Bang & Olufsenのために特別に制作された新作《Nirvana》(2026年)が登場します。

穏やかなピクニックの風景に舞う、柔らかなピンクの花びら。そこに添えられた手書きの言葉「your mind is nirvana」は、心の静けさと自由、そして想像力に満ちたひとときを描き出しています。 Beosound A9のアイコニックな円形のフォルムをキャンバスに、ウ・グクウォンの作品は視覚の領域を超え、音の世界へと広がります。

柔らかな筆致が生み出すリズムと、Bang & Olufsenの豊かで包み込むようなサウンドが響き合い、Beosound A9は韓国の現代アート、音、デザインが融合した、コレクションとしても楽しめるアートピースへと昇華します。


オーダー・展示のご案内

11月1日より、全国の店舗にてオーダーを承ります。お届けは12月中旬を予定しています。

また、11月1日より表参道店にて展示を開始。その後、梅田、阪急、松屋銀座へと順次巡回します。アートとサウンドが響き合う特別な一台を、ぜひ店頭でご体感ください。

B&O 100 years emblem

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