VOL.8 山田遊 / バイヤー
The Sound of Ambience
生まれ育った東京・三鷹の近隣に自宅を構えるバイヤーの山田遊さん。山田さんが選び抜いたモノやディスプレイは、店で、ショールームで、イベントで、展示で、人をわくわくさせてきました。雑貨、家具、民芸品、ファッション、食品など、実にさまざまな商品の知識に長けた山田さんだからこそ、音にも強いこだわりがあるだろうとの思いから話を聞きに行くと、返ってきたのは意外な答えでした。新たに家のオーディオに加わった「BEOSOUND A5」「BEOSOUND BALANCE」への印象とともに、山田さんのこだわりを聞いていきます。
さまざまな分野のクリエイションに関わり、興味関心の幅も広い山田さん。そんな彼に音楽のこだわりを尋ねると、「実はそれほど音楽を聴かないんです」という意外な答えが返ってきました。「僕は音楽を集中して聞かないと楽しめないタイプ。うまく切り替えができず、仕事に集中をすると音楽が耳に入らなくなるし、音楽に集中すると仕事ができなくなってしまう。マルチタスクの時代に、音楽を聴きながら何かをすることができないめずらしいタイプ」と苦笑します。
とはいえ、事務所で「BEOSOUND A1 」、自宅で「BEOPLAY P2」を使います。ともにデザイナーのセシリエ・マンツが手がけた製品で、彼女のプロダクトをきっかけにバング アンド オルフセンが身近な存在になりました。「クラシックなバング アンド オルフセンの製品を偏愛するコレクターの友人もいます。けれど僕はモノを見るのが好きなので、あまりに佇まいがいいと音楽が入らなくなってしまう(笑)。セシリエがデザインした小ぶりなアイテムはインダストリアルでシンプルな表情ですが、レザーなどの素材感もいい。なにより気軽に素直に音楽を楽しめます」。そんな山田さんは、オーディオ分野での自身はライトユーザーだといいます。「オーディオにこだわりをもつ友人たちはもちろん素敵ですが、僕はよりプロダクト的な佇まいでスペックから解き放たれた製品に魅力を感じます。車もまったく同じで、操作性、快適性、質感のほうが気になってしまう。やはり物としての佇まいが良く、そのうえで音もいいというのが一番いいですね」
展覧会のプロデュースやディレクションをすることも多い山田さんに、仕事では音をどう考えるのか質問すると「プロに任せます!」とひと言。「だからギャラリーを併設する僕の事務所の音もサウンドデザイナーの日山豪さんにお任せしました。もともと実験的な音作りをする人ですが、環境的な音をお願いしています。音は必要だけど、強すぎるとそっちに引っ張られてしまう」。では、どんな時間に音楽を楽しむのでしょう。「気合いを入れて向き合う」と笑いつつ、「電車や飛行機などの移動時、そして自宅での時間に楽しみます。最近、よく聞くのはワールドミュージック。インターネットの普及であらゆるカルチャーで国境の垣根が取り除かれていますが、音楽は特に顕著でしょう。先日も出張先のカンボジアで気になるとShazamで検索をしていました」と答えます。昨年、よく聞いたのはグラス・ビームス(インド系オーストラリア人のラジャン・シルバが匿名のメンバーとともに結成した3ピースバンド)で、少し土臭い音が気に入っているといいます。「若い世代はリサーチによる知識の蓄積も豊かだし、文化がミックスされ、編集力もある。そう思うと音楽は真面目に聞かないと申し訳ないという気持ちになってしまう。だからこそ物を見たり、本を読んだりしない、音楽だけと向き合う時間を設けたいんです」と、山田さん。
だからこそ、集中して聞くには場所を好きに選べるのがいいといいます。新しく家に加わった自由度の高い「BEOSOUND A5」はそうした思いに最適でした。そもそも以前と比べ、自宅で過ごす時間が増えたという山田さん。2021年末に完成した自宅は、コロナ禍でのライフスタイルの変化とともに生まれたものです。「休日は家にいることが増えました。音楽を聞くのは夜や週末。掃除の時に聞くことも多いですね。わが家には大きな吹き抜けがあるものの、各階の音は互いにほとんど聞こえません。そこでスピーカーをリンクさせ、音を同期させています。階を移動しても同じ音楽を連続して楽しめるのでストレスはありません。こういう使い方は仕事でも応用できそうです。音のあり方で空間の様子もずいぶんと変わります」
デザインについてはどう見るだろう。山田さんの自宅にやってきた「BEOSOUND A5」はデンマークのデザインユニット、ガムフラテージによるものだ。山田さんの自宅にはさまざまなアイテムが並ぶが、それらと調和している。「デザイン家電全般に、樹脂や金属といった素材をどこまで落ち着いて馴染ませるかに注力している傾向があります。もちろん天然素材を取り入れるブランドも少なくないですが、この製品は抜群にバランスがいい。佇まいが美しいし、自宅に置くとまるで本物のバスケットのようにも見える。セシリエのインダストリアルだけど空間性を備えたデザイン、そしてガムフラテージのデザインがともにラインアップされている状況もいいですね。なによりデンマークのメーカーがデンマークのデザイナーを起用して、いいプロダクトを作るなんて理想的じゃないでしょうか」
山田遊(バイヤー)
1976年東京都生まれ。東京・南青山の「IDÉE SHOP」のバイヤーを経て、2007年にフリーランスのバイヤーとして「method(メソッド)」を設立。国内外の店づくりを中心に、あらゆるモノにまつわる仕事に携わり、産地や教育機関での講演など多岐に渡って活動を行う。現在、株式会社メソッド代表取締役、 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科客員教授、東京ビジネスデザインアワード審査委員長、TOKYO MIDTOWN AWARD審査員。これまでの主な仕事に、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」、21_21 DESIGN SIGHT「21_21 SHOP」、「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」、「made in ピエール・エルメ」、「燕三条 工場の祭典」、「NOT A HOTEL」など。
Beosound A5とBeosound Balanceで聴くSpotify
CREDITS: Yoshinao Yamada
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